知る・学ぶ

牛を殺すプランクトン

岡田 克彦
ガス胞をもつシアノバクテリアの大量繁殖,いわゆるアオコ現象は世界各地の湖沼,ダム,貯水池で発生して問題になっています。 (写真、国立環境研の河地正伸氏ホームページより許可を得て転載 )

植物の葉には、ホウレンソウやキャベツのように食品となっているものもあれば、タバコの葉のように食べると命に関わるような毒を持っているものもあります。プランクトンであるシアノバクテリアも、古くから、水前寺海苔やスピルリナなど、栄養価の高い食品として食べられてきましたが、毒を持っているものがあります。新聞などで、時々、シアノバクテリアが大発生して被害が出たと報道されていますが、どんな悪い事をしているのでしょうか?

特に夏に、アオコと呼ばれるミクロキスティスの大発生が起こります。ミクロキスティスは、野外の淡水湖や池に生育していて、普段はまばらに生育しているため、水質に影響を与えることはほとんどありません。しかし、時々、大量発生してアオコと呼ばれる状態にまで、増殖します。ミクロキスティスは人や動物にとって有害なミクロシスチンと呼ばれる毒を作るので、注意が必要です。アオコの発生した池の水を飲んだ牛や馬が死んでしまったという話は古くからあり、人が中毒を起こして苦しんだという記録もあります。毒の本体はアミノ酸が7つ環状に結合したペプチドで、リボソームでのタンパク質合成とは異なる別の仕組みで酵素によって作られます。