日本科学未来館では、未来社会の礎となる科学技術を展示するとともに、併設されたラボにて最先端の科学技術に関する研究プロジェクトを推進しています。現在、アンドロイドからオルガノイドまで幅広い分野の研究者を招聘して約10件のプロジェクトを推進しており、我々の「サステイナブルバイオテクノロジープロジェクト」はその一つです。「サステイナブルバイオテクノロジー」とは、生物の力を人類の持続的発展に役立てる科学技術のことで、特に、環境調和型の未来社会の基盤となるバイオテクノロジーの創成を目指しています。現在は、食品廃棄物などからクリーンエネルギーの水素や電力を生産するバイオプロセスに関する研究などを実施しています。
これらバイオプロセスの性能は、有機物から電気をつくる発電菌の能力に依存します。そこで我々は、「スーパー発電菌をみんなで探そうプロジェクト」を企画し、中高生とともに全国各地の泥から未知の高活性発電菌(スーパー発電菌)の探索を行っています。このプロジェクトでは、応募してきた中高生に泥電池キットを送付し、各地の泥で発電実験をしていただきます。その後Zoom報告会で結果を聞き、よく発電していた泥電池を大学に送付していただきます。大学では、研究室の学生たちが送られてきた泥電池から発電菌の単離・解析を行いますが、今までに新種の発電菌や特許出願した高活性発電菌が採れてきています。一方中高生たちは、自ら仮説を立てて泥電池実験行うことで、サイエンスを体験します。
2021年度に開始して4年目になりますが、年々参加者が増え、今年度は35チーム、約200名の中高生が、150個の泥電池を運転してくれました。11月初めに行った報告会の結果を受け、現在十数個の泥電池を回収しているところです。この中からスーパー発電菌を単離し、現在企業と共に開発を進めているバイオプロセスにそれらを導入して性能を高めていきたいと考えています。中高生と共に行う泥電池研究の成果がサステイナブルバイオテクノロジーの実用化に貢献することが我々の夢であり、使命と考えています。
本プロジェクトは、全国の中高生の皆さんに加え、日本各地で発電菌を研究する研究者の方々、多くの中学校や高校の先生方、未来館の科学コミュニケーター、本学職員の方々、生命エネルギー工学研究室の学生さんたち、本学の学生サイエンスコミュニケーターなど、多くの方々の協力があって進めてこれました。皆様に感謝したいと思います。また、来年度以降も継続していく予定ですので、ご協力よろしくお願いいたします。