薬剤師の業務の根幹は、薬剤師法第一条に示されている通り、「国民の健康な生活を維持するものとする(一部抜粋)」と定められている。薬剤師に期待される役割として、健常人の健康を維持することも大切な仕事である。医薬品と食品の違いや効果について、それぞれの物性と生体への効果を評価するための基礎的知識を習得することは、信頼される薬剤師への第一歩と言える。特に近年、疾病予防および健康維持・増進に資する食品として注目されている特定保健用食品(トクホ)は、医薬品同様の「治験」の実施により安全性や有効性を明らかにし、消費者庁長官から、効果の表示が認められた食品である。ここでは、キトサン含有サプリメント(キトサンサプリ)の、メタボリックシンドロームへの有効性および用量設定試験での工夫や苦労と共に、医薬品とトクホの違いについて具体例を紹介する(図1)。
トクホの治験においては、製品と同じ成分・製剤で実施する必要が有ると同時に、評価指標である体重や内臓脂肪について、対象食品摂取中および摂取後にその効果を確認する必要がある。図2にグラフで示した事例では、トクホ許可取得を目的に、キトサンサプリを8 週間毎日摂取後、2 週間の未摂取期間を設定し、体重変化率(a)、内臓脂肪面積(b)、体脂肪率(c)、ウエスト周囲径、血液検査値等の推移で評価した。
この事例に限らず治験では、各群の被験者の体組成や年齢を均等に群分けすると同時に、食事や検体の摂取タイミングなどを同一にする必要が有るため、全被験者への食品の提供と共に日誌の記載、摂取時間および間食の禁止などを厳守させる。また、個人差や体調変動などの影響が有るため、データのバラツキが大きく、有効性の検出感度は低くなる。そのため、統計解析学の基礎を理解し、データの集計方法などを実践し、習熟しなければならない。例えば図2 の事例の場合は、(a )で変化率、(b )で内臓脂肪面積の平均値、(c)で減少率推移や近似曲線を活用するなどが具体的に工夫している点である。トクホは医薬品と比較して、より幅広い人々に摂取されるので効果と共に、慎重に安全性を評価する必要があるため、医薬品同様、被験者数が多く、試験期間が長くなる傾向にある。当センターでは、製品の有用性を適切に評価できる能力育成と、当局から認証を受けた製品を用いた臨床教育を通し、国民の 健康維持や病気の予防に貢献できる薬剤師を育成している。