特別寄稿・座談会

RS とTPP

東京薬科大学 臨床薬学研究センター 発足記念  特別寄稿

最近は、様々な場面で略語が多く、なかなかわからないことが多い。RS( Regulatory Science)とTPP(Target Product Profile)を検索すると、「RSウイルス」や「環太平洋パートナーシップ協定」の方が一般的な話となるかもしれない。しかしながら、RSとTPPは、特に、創薬に資する最新研究を実施している先生方に理解して欲しい内容であるので、簡単にお話したい。

まず、RS。こちらは、国立医薬品食品衛生研究所(以後、国衛研)の当時副所長だった内山充先生(国衛研名誉所長)の提唱された概念で、「科学技術の成果を人と社会に役立てることを目的に、根拠に基づく的確な予測、評価、判断を行い、科学技術の成果を人と社会との調和の上で最も望ましい姿に調整(レギュレート)するための科学」とされ、最新科学を実用化するために必須の概念として、国内外で知られている。

先生方の最先端の研究シーズを実用化するためには、RSによる様々な視点からの調整が必要となる。その調整の際、研究シーズそのものの特徴がわかる様に紹介しなくてはならない。論文を読めばわかるだろうではなくて、様々な分野の先生方に理解してもらえるように紹介できることが重要となる。その際、シーズ概要、有効性、安全性等の情報がどれだけ集められているのかもポイントとなる。

話が少し反れるが、私がPMDA( Pharmaceuticals and MedicalDevices Agency; 医薬品医療機器総合機構)に勤務していた際、アカデミアシーズの実用化を促進すべく、2011年7月より、薬事戦略相談( 現在のRS 戦略相談)の立ち上げに関わったことがある。その時、相談に来たある研究者(以下の発言内容は抽象化している)が、「幅広いニーズを満たす特徴を有するシーズなので、治療薬にも診断薬にもなる優れたものである。」と研究成果をアピールし、「実用化に向けてはどうすればよいか」と質問を受けた。PMDAとしては、治療薬と診断薬では開発パッケージが異なるので答え難いが、まずは、どちらの実用化が現実的かを考えたい。そのためには、そのシーズに関するデータを見て、どこが強みで開発を進めるために次にどのようなデータ収集が必要かなどを考える。つまり、TPPという基本情報があれば話が早いということになる。

TPPについては、AMED(Japan Agency for Medical Reseearchand Development; 日本医療研究開発機構)ホームページで、「予測される効能・用法、用量・投与形態、剤形、有害反応などをまとめたもので、事業性評価や Go/No-go 判断の材料となりうる。近年開発初期段階から TPP を設定することが求められる傾向にある。」と紹介されている。是非、先生方にもTPPの必要性は理解して欲しい。ただ、個人的には、研究者がTPPをすぐに一人で書きあげるスキルを身につけることを必須とは思っておらず、各研究者は自分の研究に専念し、このようなTPPの記載のアドバイスやRS 相談のサポートができる人材が研究機関(例えば、本学の未来創薬研究所)にいることが、実用化を促進するために重要と考え、その実現に少しでも寄与できれば幸いである。

(2025年FALL CERT12臨床薬学より)

投稿日:2026年03月06日