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シアノバクテリアの進化と葉緑体

佐藤 典裕

その昔、シアノバクテリアが真核細胞に内部共生し、それが葉緑体へと進化した、つまり植物が誕生したとされています。その根拠の一つが、光合成系がシアノバクテリアと葉緑体とで似ている点が挙げられます。両者とも、チラコイド膜を持ち、そこで光化学系 I 等から構成される光合成の電子伝達系により、光エネルギーを ATPやNADPHといった化学エネルギーに変換します。次いで、可溶性画分である葉緑体ストロマあるいはシアノバクテリア細胞質にて、その化学エネルギーをもとに二酸化炭素を固定し、有機化合物を合成していきます。


現存するシアノバクテリアのうちGloeobacterは、 rRNA遺伝子の分子系統学的解析から最も原始的とされています。おもしろいことに、このGloeobacterはチラコイド膜を持たず、細胞膜に光合成電子伝達系を保有しています。さらに、チラコイド膜特異的な脂質、スルホキノボシルジアシルグリセロール(SQDG)が欠けています。おそらく、誕生した当初のシアノバクテリアは、Gloeobacterに似た特徴を示していたのでしょう。こうして見ると、葉緑体が誕生するまでの過程をひもとくには、単にシアノバクテリアの共生とその後の変遷だけでなく、共生する以前のシアノバクテリアの進化も考えていく必要がありますね。