TAMAリケジョ育成プログラム(2021・2022年度実施)

ロールモデル集2-③ 自分の研究を商品につなげ、人の健康に寄与したい

大橋 千晶さん

なぜ理系に進もうと思ったのですか?

小学生の頃に「1リットルの涙」というドラマを見たのが最初のきっかけでした。ドラマの内容は、15歳で難病を発症した女の子がその病気と闘うという物語でした。このドラマを見て、「病気で苦しんでいる多くの人の助けになりたい。今まで治せなかった病気を治せる薬を作って、世界中の人の病気を治したい!」と思い、薬の研究に興味を持つようになりました。

中学、高校と、やはり理系科目が好きだったので、大学では理系の学部に進もうと早々に決めていました。ただ、理系科目は好きでしたし興味もありましたが、得意ではありませんでした。ですが、小さいころに抱いた夢を叶えたくて、薬学部に進学することにしました。学科は相当悩みましたが、4年制の学科を選びました。4年制では、6年制と違い薬剤師の免許は取りません。その分、多くの時間を研究に割けるため、研究をしたかった私には魅力的でした。

大学時代のことを教えてください。

大学の講義は高校と比べて時間が長く、内容も段違いに難しくて、ついていくのに必死でした。試験科目も多く、正直なところ勉強はとても大変でした。成績の良い友達に教えてもらいながら、試験前に猛勉強してなんとか試験を乗り切っていました。ただ、興味がある分野だったので、大変でしたが楽しかったですね。

3年後期から研究室に配属されるのですが、できるだけ身近な病気について研究したかったので、がんの研究ができる研究室を選びました。研究室では、実験手技を学ぶのはもちろん、自分の研究に関係のある論文を探して読む能力や、研究成果をまとめてプレゼンテーションする能力なども身につけました。大学の講義で身につけた知識よりも、研究室で身につけた技術や能力の方が、今の仕事に役立っています。

就職活動は製薬会社を中心に行いました。しかし、活動する中で、病気を治すだけではなく、病気を未然に防いで日々健康でいることも重要なのではないかと考え始め、ヤクルト本社を受けることにしました。薬のことしか学んで来なかった自分が食品会社に入社することに不安もありましたが、より身近な食品をとおして、人々の健康に寄与したいと思い、入社を決めました。

どんなお仕事をされているのでしょう?

修士課程を修了後、株式会社ヤクルト本社に入社しました。それから現在まで中央研究所の食品研究所に所属し、食品の開発研究に携わっています。大学では自分の興味の赴くまま研究していましたが、企業の研究では、会社の方針と自分の興味を一致させ、商品化も視野に入れて研究を進めることが重要になります。現在の業務としては、乳酸菌を培養して新しい特性を見出し、その特性を利用した新規乳酸菌飲料の開発研究をしています。また、乳酸菌の特徴について調べる基礎的な研究もしています。試験管での培養試験から、工場に導入することを目的とした大きなタンクでの培養まで幅広い業務に携わることができています。

業務をとおして、自部署の先輩だけでなく、部署をまたいでさまざまな先輩から指導していただき、自身のスキルアップに繋がっています。徐々に任される仕事も増えてきました。いずれは、自分が担当する研究を新商品へと繋げたいと考えています。

仕事の「ここがおもしろい!」を教えてください。

自分の研究が将来多くの人の健康に役立つかもしれないというのが大きなやりがいの一つです。私が携わったものは、まだ世に出ていませんが、いつか商品化して誰かのもとに届き、その人の健康に寄与することができたら、これほど嬉しいことはありません。その時のために日々の研究を進めています。

研究成果が特許になったときはとても嬉しかったです。研究はうまくいかないことの方が多く、思ったとおりの結果が出ないこともありますが、周りの方に助けられながら、試行錯誤して成果を出します。積み上げた成果が形になって残ると、モチベーションも高まります。

仕事と家庭との両立はどうでしょう?

先日結婚したばかりで、まだ模索中です。1人暮らしの時は、職場の近くに住んでいましたが、今は夫に合わせて職場からかなり距離があるところに住んでいます。そのため、生活リズムはがらりと変わりました。通勤時間が増え、さらに家事に費やす時間も増えたので、あまり時間に余裕がありません。今は仕事の効率化と家事の効率化を同時に進めて時間を捻出しようと頑張っています。実験が主な業務なので出社することが多いですが、デスクワークをするときは在宅勤務を活用するなど、柔軟に勤務しています。

中高生に「理系のススメ」をお願いします。

理系科目が苦手だから、理系に進むのを迷っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。理系を選択する人は全員理系科目が得意かというとそうではありません。私は物理が苦手でしたが、薬の研究がしたかったので迷わず理系の学部を選択しました。苦手なことがあっても意外と何とかなります。好きなこと、興味のあることが理系の進路の先にあるなら、理系に進むのも悪くないと思います。自分の興味や好きという気持ちは是非大切にしてくださいね。

進路選択は、自分が将来やりたいことは何なのか考える良い機会になります。誰かに相談することで、やりたいことが明確になることもありますので、1人で抱え込み過ぎずに保護者の方や学校の先生などを頼ってみるのもいいと思います。自分の意志で悔いのない選択ができることを祈っています。

投稿日:2022年11月30日