TAMAリケジョ育成プログラム

ロールモデル集1-② 乳酸菌やビフィズス菌のはたらきを、科学的に、わかりやすい言葉で伝えたい

R K さん

なぜ理系に進もうと思ったのですか?

中学生のころから医学や宇宙科学といった分野に興味があり、科学雑誌を購読して読むなど、勉強というより楽しんで科学に触れていました。人の体について興味を持つ中で、食べ物で人が健康にも病気にもなることを知り、食品と健康のかかわりについて深く知りたいと考えるようになりました。進路を決めるにあたり、自分の興味のある分野を学べる大学や学部について情報を集めるため、食品と健康について研究されている方にアポイントを取り、実際に会ってお話を聞きました。その経験をきっかけに、目標とする大学と学部を決め、受験の準備をしました。

大学時代のことを教えてください。

大学では主に食品の成分に関する勉強をしました。体と食品の関係についてさらに学びたいと考え、大学とは別の大学院に進学し、食物アレルギーに関する研究を行いました。高校の時に生物を履修していなかったため、大学・大学院で生物の基本から学び、大変ではありましたがとても面白く勉強できました。特に、大学院で研究のテーマに選んだ食物アレルギーにかかわる免疫のシステムは非常に複雑で難しく、覚えることがたくさんあり、とてもやりがいのある研究でした。

勉強以外では、スポーツに熱心に取り組みました。高校生までのスポーツとは無縁だった生活から一転、大学では体育会系のバドミントン部に所属しました。メンバー全員一丸となって目標を目指す中で培われたチームワークや、ハードな練習で身につけた体力は、現在の仕事や生活でも活かされています。

どんなお仕事をされているのでしょう?

大学院の博士課程修了後、ヤクルト本社に入社し、基礎研究部門に配属されました。当初は、大学で行う研究と企業で行う研究の違いにとまどいました。企業での研究は企業理念の実践を目的としている点が大学での研究と大きく違います。ヤクルト本社の企業理念である「私たちは、生命科学の追究を基盤として、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献します。」を目指して研究を行う、その意識をもつことが大切です。

研究は、まず仮説をたてるところから始まります。たてた仮説を実証するため、実験を繰り返して正確なデータを一つひとつ積み上げていく工程はとても地道な作業であり、上司や先輩、同僚の助けを借りながら粘り強く進めました。苦労して得られた成果をまとめた論文が学術雑誌に掲載され、学術研究として高く評価されたことはもちろん、自身の研究が少なからず社会の役に立つことを実感でき、大変うれしかったです。

現在は研究管理部門に所属し、主に研究広報活動を行っています。講演会や研究所の見学施設の案内などを通じて、当社で実施している研究活動を広くお伝えしています。基礎研究に従事した経験は、専門的な研究の成果を読み解き、専門家だけでなく一般消費者を含むたくさんの方々に研究活動を伝える現在の業務につながっています。一人でも多くの方に乳酸菌の効果などの研究情報をお届けし、健康で楽しい生活づくりに貢献できればと考えています。

仕事の「ここがおもしろい!」を教えてください。

入社後配属された基礎研究部門で私が携わった研究は、ヤクルト独自の乳酸菌がどのように免疫システムにはたらきかけているかを明らかにするものでした。免疫とは細菌やウイルス、がんなどから体を守る防御機能のことで、もともと人の体に備わっています。乳酸菌が人の体の免疫システムにはたらきかけることはすでにわかっており、良いはたらきをもたらす仕組みを明らかにすることが私の役割でした。直接製品の開発につながる仕事ではありませんが、乳酸菌が人の健康にどのように役立つのかを明らかにすることは、ヤクルトの商品の科学性をお客さまに理解いただき、健康づくりに役立てていただけるきっかけにつながります。研究が将来的にどのように社会に貢献するか、ビジョンをしっかり意識することで大きなやりがいを感じていました。

現在は当社の研究活動を広く社会に伝える広報活動を主に行っています。ヤクルト独自の乳酸菌やビフィズス菌がどのように体に良いはたらきをしているのか、難しい研究成果をわかりやすい言葉にかえてお伝えし、お客さまに理解していただけた時はうれしいですね。私からお伝えするだけでなく、お客さまからヤクルトの商品に関するうれしいお声をいただき、仕事のモチベーションを上げていただくこともあります。ヤクルト本社に入社してこの仕事にかかわることができてよかったな、と実感しています。

仕事と家庭との両立はどうでしょう?

産休・育休を経験して、子育てをしながら業務を行っています。時短勤務などの会社の制度を利用し、親戚や家族の協力も得ることで、子育てをしながら研究業務を続けることができました。子どもの送迎や家事の時間をつくるため、仕事の時間に制約があることは大変でしたが、むしろ効率よく仕事をこなす意識を持つことができました。また、子育てをしながら働く先輩や仲間が職場に多いことがとても心強かったです。母親ならではの悩みに共感して励ましあったり、情報を交換したりすることで支えられていました。

中高生に「理系のススメ」をお願いします。

理系について、みなさんはどんなイメージをお持ちでしょうか。数学や化学、物理、生物など教科と結びつける方が多いと思います。数学や理科系の教科が得意な人が理系の進路を選択すると思っている方もいらっしゃるかもしれません。私は自分の経験から、身近な自然や科学、ものづくりなどに興味があれば、教科の得意・不得意にかかわらず、理系進路を選択肢の一つにしてもらえたらと思います。実は自分自身、高校生の時に数学や物理が苦手でした。しかし、自分の興味(人の体や食べ物)について勉強してみたい、という思いから理系の進路を選びました。教科の得意・不得意で進路を考えていたら、おそらく今の自分はなかったと思います。少しでも興味を持てるものがあればその興味を大切にして、理系も選択肢の一つとして考えると、ご自身の将来の可能性が広がるかもしれませんね。