知る・学ぶ

プロトプラスト(protoplast)と 細胞融合

岡田 克彦

protoplast(英語)の日本語訳は、原形質体ですが、カタカナでプロトプラストと表記される場合も多くあります。植物細胞、細菌、菌類などでは、細胞は外側を細胞壁により覆われています。その細胞壁を酵素処理により取り除いた細胞を、プロトプラストと呼びます。

植物ではペクチナーゼとセルラーゼにより、細胞壁を構成するペクチンとセルロースを分解して作製します(環境応用植物学研究室作成 実習動画別ウィンドウで開きます参照)。プロトプラストにした細胞どうしを融合させる事ができ、融合後、融合細胞から一つの個体として成長させたものにポマト(ポテトとトマト)、オレタチ(オレンジとカラタチ)などがあります。ポマトは一応、根にイモが、地上部には実がなりますが、どちらも今一つ美味しくないそうです。オレタチも、苦みが強く食用には適していないそうですが、耐寒性やウイルス抵抗性を持つと考えられ、「オレンジカラタチ中間母本農1号」という名称で品種登録されています。

動物細胞は細胞壁が無いので、プロトプラストを作らなくても細胞融合ができます。細胞融合の応用例としては、ガン細胞のどんどん増える性質と、抗体産生細胞の抗体を作る性質を併せ持った細胞を細胞融合によって作り、ほしい抗体をたくさん作る技術が確立されています。こうして作られた抗体はモノクローナル抗体と呼ばれ、たくさんの種類のモノクローナル抗体が作られていて、抗体でガン細胞の増殖を抑えるなど、治療にも応用されています。

投稿日:2022年10月31日