TAMAリケジョ育成プログラム

ロールモデル集2-② 動物、微生物から商品開発へ好奇心が掻き立てられる
新たな出会いに誇りとやりがいを感じています

高木 理沙さん

なぜ理系に進もうと思ったのですか?

最初に文理選択を意識したのは中学2年生の時でした。個性と主体性を重んじる中高一貫校に通っていたこともあり、入学時から自身の人生について考える機会は多かったように思います。幼少期から動物が好きで、漠然と将来は動物にかかわりたいと考えるようになり、理系科目を意識的に勉強するようになりました。高校生になってからは「13歳のハローワーク」系の書籍を眺めながら具体的な将来のイメージを膨らませ、世の中に新しい発見を生み出すような研究開発をしたいと思うようになりました。

大学の学部選択について、動物にかかわる・研究開発というキーワードだけでは獣医学部、農学部、理学部、薬学部等、複数の選択肢がありましたが、オープンキャンパスで何となく面白そう・雰囲気が合いそうと感じた、農学部の畜産系コースに最終的に進路を選択しました。

大学時代のことを教えてください。

高校生の段階ではまだまだ自己分析が不足しており、将来自身が何をしたいのか・どうありたいのか、等についての明確なビジョンを持てていなかったので、大学ではなるべくたくさんの経験を通じて自身の興味の矛先を知ろうと決めました。そこで、畜産関係の内容はもちろんのこと、醸造学や生命科学、解剖学、植物学、昆虫学、遺伝学、免疫学等、様々な分野の講義や農場・牧場でのフィールドワークを受講し、自身が最も興味が湧く分野を探索しました。

その結果、「微生物」に多大な可能性を感じ、自身にとっての興味の矛先であることを認識しました。研究室配属では腸内細菌の研究に没頭しました。非常に厳しい指導で有名な研究室だった為、数え切れない程の苦い思いを経験しましたが、そのおかげで論文投稿や学会発表といった目に見える実績だけでなく、強靭なメンタルを手に入れることが出来ました。その後、大学・大学院で学んだことを社会人になってからも活かしたいという想いから、食品企業の研究開発職に絞って就職活動に励みました。

どんなお仕事をされているのでしょう?

就職活動の甲斐もあって、中高生の頃からの夢であった動物にかかわる・研究開発ということと、大学・大学院生の頃に思い描いた微生物の可能性を広げるということを全て叶えることが出来る㈱明治に入社しました。工場での実習や研究所での研修等を経た後、マーガリン類の商品開発部署に配属されました。配属当初は動物とも微生物ともかかわりがない部署であることに不安を感じましたが、大学では味わうことのなかった商品開発の楽しさを感じ、またこれまで全くかかわりがなかった油脂化学や乳化といった分野に対しても新たな好奇心が掻き立てられました。その後、担当分野がクリーム・バター類に変わり、乳素材や乳牛に対する知識を深めました。

クリーム・バター類の大半は業務用商品である為、業務用の世界にも大変興味が湧きました。スーパーに並ぶ商品とは異なり、業務用商品のお客様はパティシエ等のプロになります。乳脂肪・製法の特性を十分に把握した上で、プロが認める本当に美味しくて使いやすい商品を提供することに誇りとやりがいを感じました。

商品開発に携わって5年後に、現所属部署の研究戦略部に配属となりました。㈱明治で取り組んでいる研究全体の流れを把握出来る部署である為、今後俯瞰的に物事を見極めて判断する能力を養っていきたいと思います。

仕事の「ここがおもしろい!」を教えてください。

商品開発において、商品リニューアルを担当する機会はよくありますが、全くの新商品を担当する機会は非常に珍しいです。自身が最初から携わった商品に対する思い入れは強く、店頭に置かれている姿を見るとやはり嬉しく思います。

これまで携わってきた商品(マーガリン類、クリーム、バター)は全般的に単品で食さないものばかりですが、パンやケーキ、クッキー等の嗜好性を高め、お客様の生活を彩る一助になっていたら良いな、と思います。

中高生に「理系のススメ」をお願いします。

貴重な中高生の時間を何となく漫然と過ごすのではなく、様々な事に興味を持って積極的に取り組み、自身は何をしている時に一番楽しいと感じるか、について本気で考えてみて下さい。それは自身の個性は何か、を考えることに繋がっているようにも思います。自身と向き合えば自ずと今の向くべき方向が見えてくるのではないでしょうか。今もしテストで理系科目の点が良くなかったとしても科学が楽しいと感じるのであれば迷わず突き詰めてほしいと思います。実際、私も中高生の時は生物の授業はつまらないと感じており、テストの点も良くなかったのですが、生物の図録を見たり、動物園に行ったり、生物に触れ合うこと自体は楽しいと思っていました。しかし、当時は何となく楽しいと思っていただけだったので、自身の興味についてしっかり自覚したのは大学時代になってからでした。自身と向き合う時期が早ければ早い程、将来の可能性はもっと広がっていただろうな、と今となっては思います。

進路にはテストのような正解はありませんので、もしかしたら選んだ道が思い描いていたものとは異なる可能性も十分にあると思います。私自身、大学時代に全身全霊で微生物の研究に取り組んでいたにもかかわらず、社会人になってからは全くそれらの知識を活用していません。しかし、何かに没頭して取り組んだ経験は、自身にとって確固たる自信をもたらしてくれたので決して無駄とは思いません。また、㈱明治に入社してからの経験は、自身に新たな価値観・知識を付与し、視野を広げてくれたと言い切れます。もちろん、今でも微生物の可能性を広げたいという想いは変わらず持ち続けています。どんな形であっても今後微生物に携わる機会は必ず訪れると信じていますし、これまでの様々な経験が思いもよらぬ形で繋がる可能性もあります。

目の前の勉強だけでなく、様々な事に意欲的にチャレンジしてご自身の探求心・好奇心に目を向けてみて下さい。純粋に楽しいと感じたその想いを忘れずにリケジョの道へと突き進んでほしいと思います。