我が家には狭いながらも庭があり、芝と庭木、それに宿根草が植わっている。難しいのは、どの植物がどこでうまく育ってくれるのかを見極めることである。カタログやネットで気に入った花を見つけて、その苗を植えても育つとは限らない。それぞれの植物にあった日当たりと水はけ、土の性質があるようである。
水はけの良い明るい日陰
まずは、気に入った植物品種にあう場所をカタログや解説書、ネット情報で探すが、まず間違いなく、どの品種に関しても「水はけの良い日当たりの良い場所に植えなさい」と書いてある。植物は日当たりを好むのは当然である。光合成を行うのだから。
水はけの良い場所というのも、少し経験を積むとその理由は明白になる。植物には水が必要だとおもって、水をやる。もちろん、水は必要なのである。ところが、初心者が水をやらずに枯らすことはまずない。水がかなり少なくても、地植えした植物はまず枯れない。植物はまわりの土から自力で水を吸い上げてくる。
初心者が間違うのは水のやり過ぎである。水をやりすぎると根腐れというのを起こして、ほとんど一日で枯れてしまう。文字通り根が腐ってしまう。その理由は簡単で、水をやりすぎると土の中の空気が無くなってしまうからである。根の窒息死である。植物の根も呼吸をしていることがこれでわかる。一端、窒息死した根はもう元に戻らない。それを避ける為には、水はけの良い場所に植えることが大切である。
さて、一番ひどい解説は「明るい日陰に植えて下さい」という解説だ。日陰を好む植物の種類がある。わかった、日陰だな。まてよ、日陰というのは暗いだろう。明るい日陰というのは何だ。意味不明である。
太陽光は直射光であるが、直射光があたる時間はまわりの環境でかわる。遮蔽物が南にあれば、直射光はあたらない。葉の茂った木の下であれば、日中は日があたらないが、朝夕の斜めの光はあたるかも知れない。
これとは別に太陽光が空の粒子に反射してくる光もある。空が青いのは粒子に反射した光が青く見えている。したがって、太陽の直射光があたらなくても、空からの光を完全に遮蔽しなければそれなりの光があたる事になる。
おそらく、明るい日陰というのはそれを指すのであろう。直射日光は当たらず、空の反射光は当たる場所という事になる。なんだ、やっとわかった。
カタログやネットの都市伝説
たとえば、クリスマスローズという明るい日陰を好むと書いてある植物がある。よし、直射日光が当たらない、空の反射光があたる場所だな。ところが、近くのクリスマスローズを栽培している園芸農家のおじさんに聞くと、「クリスマスローズは直射日光の当たる場所が良いですよ。私らそうしています。」との事。何だ、一体どうなっているのだ。
解説書がいかにいい加減で頼りにならないかがわかる。これは解説書に限らない。ネットで調べても同じだ。おそらく解説書やネットの解説を書いた人は自分で育てたことが無いのだろう。他の解説書に書いてあるのをコピペしているのに違い無い。こうして、「クリスマスローズは明るい日陰に植える」という都市伝説が出来上がる。ネット情報を信じてはいけない。もっとも個人が自分の経験を書く記事は信頼できる場合も多い。
我が家の対処法
気に入った花の苗を一株買って植えてもうまく育つとは限らない。苗販売会社では最初から3株セットで販売する場合もある。最初は抱き合わせ販売だ、けしからん、と思ったが、これが以外に良い。3株を日当たりや水はけの違う3カ所に植える。うまく、3株のうちの1株が植物好みの場所に植えられれば、その株が育つ事になる。我が家ではこれを「ダーウィン的園芸」と呼んでいる。
ダーウィン進化とは、沢山の個体の中で少しでも適した個体が環境の中で生き残ることによる生物の進化である。上の例はしたがって、実は個体は似ていて、環境の方を変えているので、厳密にはダーウィン進化とは異なる。
庭では、本物のダーウィン進化的、自然選択も起きる。ある植物が気に入って苗を購入するのだが、何回購入しても、どこに植えても育たない。あきらめかけた時、1株が育ち始めた。それだけではない。育った株は毎年どんどんと増えはじめた。おそらく、我が家の環境に適した個体がついに手に入り、増殖を始めたと思われる。自然選択である。
時々変化する生存条件
反対のことも起きる。うまく適した株が適した場所に生育し始めて、毎年花を咲かせるようになった。めでたし、めでたし、と思うのがまだ素人である。やがて、育つ株がだんだんと背が低くなり、花数が少なくなり、ある年、突然芽が出なくなる。
ネットを引くと、厭地(いやち)と書いてある。説明はいろいろあって、どれが正しいのかわからないが、必要栄養素の枯渇、生育阻害成分の蓄積、病原菌の繁殖などらしい。何れにせよ、植物が育つ環境を自分で変えてしまって、自分の株はそこに生存できなくなってしまったと思われる。
自然選択説
チョット待て、この話しはどこかで聞いたことがあるぞ。そうだ、我々人類だ。地球の環境に適応して、種の個体数を数十億にまで増加させた。その結果、自らの生存環境を変化させてきた。
いやいや、人類はこれまでの生物種とは違う。単なる自然選択で生存を決めているわけではない。知性をもった存在で、環境悪化を止めることができるはずである。たぶん。
(4/12 本連載は12回連続となります。)