学生によるサイエンスコミュニケーション

腫瘍医科学研究室の最新成果に迫る!

腫瘍医科学研究室(生命医科学科)
写真 左:青柳泰成さん(博士2年)、右:林嘉宏准教授

同研究室の林嘉宏准教授率いるチームが、難治性血液がんの一種である骨髄異形成症候群(MDS)の発症機序を解明しました。

皆さんは、がんが怖いですか? 実際に、さまざまな治療法が確立される中、いまだに治療法がないがんがあります。腫瘍医科学研究室の林嘉宏准教授は最近、難治性血液がんの一種である骨髄異形成症候群について、治療につながり得る発見をしました。そこで私は、皆さんとその知見を共有したいと思い、林准教授を取材しました。

腫瘍医科学研究室ではどのような研究を行っていますか?

主に血液がんの研究を行なっています。また、他のがん全般、さらに患者さんの体の中で起こるさまざまな合併症がどのように起こるかについても研究を進めています。全ての研究テーマは、「臨床で求められていることは何か」を出発点として始めています。

林先生が特に力を入れている研究は何ですか?

血液がんの中でも、高齢者の中で増加していていまだ治療法がない「骨髄異形成症候群(MDS)」の研究を主に進めています。最近、その病気がどうやって起こるかについて、大発見がありました。

知っています! 2021年8月末に国際学術誌、Cancer Discovery のオンライン版に掲載されているのを見ました。その研究の内容を具体的に教えてください。

「ミトコンドリアがバラバラになる」。これが、MDS 発症の大本であることが、マウスの細胞や患者さんの細胞の解析で判明しました。これは、世界初の発見です。さらに、この病気のマウスに、ミトコンドリアの断片化を引き起こすタンパク質の阻害剤を投与すると、このマウスは造血不全から回復しました。ミトコンドリアを標的にした治療法につながる可能性があります。

この研究で大変だったことは何ですか?

これまでの研究でもそうですが、今回も、最初はミトコンドリアは全く視野に入っていませんでした。ただ、いろんなデータを解析していくと、ミトコンドリアが異常なのではないか、ということが浮上しました。ミトコンドリアは専門外だったので、研究に必要な実験手技を習いにさまざまな所へ行ったり、自分でもいろいろと調べたりしました。そこが大変でした。

どのような気持ちで研究に取り組んでいますか?

研究する上で、自分が思っていた結果でなくても、素直に受け止めて、自分の至らなかったところを見直すことを大切にしています。また、本当にやりたいことをやるべきです。最後に、現在本当にやりたいことをやれていない場合でも、今いるところで精一杯頑張って下さい。必ず将来につながります。

とても心に響きました。研究以外にも共通することですね。素敵な言葉をありがとうございました。

 

※本記事は授業「生命科学ゼミナールⅡ(サイエンスコミュニケーション入門)」の一環として、学生が取材、執筆を行いました。