学生によるサイエンスコミュニケーション

より患者に近い研究を

免疫制御学研究室(生命医科学科)
写真:浅野謙一准教授

免疫制御学研究室の浅野謙一准教授は、「炎症を抑える単球・マクロファージ」を使って疾患を治療する研究を重ねています。その思いの源を探りました。

私たちの体は常に、ウイルスや細菌などの侵入にさらされています。それら侵入者から体を守るためにあるのが、免疫系です。免疫系は多種多様な細胞が互いに刺激したり抑制したりし合って絶妙なバランスを保っているため、それが崩れると日和見感染や自己免疫疾患などさまざまな問題が起きてしまいます。

そんな免疫の中でも感染初期に働く免疫細胞が、単球やマクロファージです。これらの細胞は侵入してきた異物を細胞内に取り込んで除去するのと同時に、他の免疫細胞に侵入者の存在を伝え、免疫応答を活発にします。しかし最近、これらの細胞に炎症を抑える集団が見つかりました。発見したのは田中正人教授が率いる免疫制御学研究室。今回は同研究室でこの細胞の研究を進める浅野謙一准教授にお話を伺いました。

ご研究について教えてください

元々は腎臓内科の臨床医で、自己免疫性腎炎の患者さんを診る機会がありました。腎臓病の患者さんは病院に来る時点で治らない状態まで進行し、多くの場合、人工透析になってしまいます。これに対し、自己免疫疾患が原因で腎臓の病気を発症する患者さんは適切な治療を直ちに始めることで、腎機能を維持できます。このことに光明を見いだし、免疫の研究に進みました。

研究者をしていて、難しいと感じることはありますか?

一人で出来ることは限られているので、学生さんや共同研究者に力を借りなくてはなりません。その時に、やっていることの面白さを共有することは楽しいことですが、分野や背景が違うとなかなか伝わらないもどかしさもあります。

好きな本はありますか?

読んでいて楽しい本を選ぶようにしています。よく練られた表現は自分が文章を執筆するときの参考にもなります。特に歴史や科学を題材にしたフィクションが好きで、最近読んで気に入ったのは、『ワカタケル』(池澤夏樹著)、『蛇の言葉を話した男』(アンドルス・キヴィラフク著)、『SEVEN EVES』(ニール・スティーブンスン著)です。

大学生に戻れたら、今と同じ研究分野を選びますか?

もう少し臨床のような実際の疾患に近いところにいたいです。患者さんにもっと近いところで研究をやりたいといつも思っていますし、これから近づいていきたいとも思っています。

ありがとうございました。

 

※本記事は授業「生命科学ゼミナールⅡ(サイエンスコミュニケーション入門)」の一環として、学生が取材、執筆を行いました。