学生によるサイエンスコミュニケーション

科学の世界を覗いてみよう

SMALL TALK about SCIENCE

この世にドラえもんがいるとしたら、皆さんはどんなひみつ道具を出して欲しいですか? どこでもドア、タケコプター、もしもボックス…。数え切れない程の種類があり、どれもこれも「たしかにあったらいいけど、ちょっと思いつかないよな」と思うものばかりです。

私が小学4年生の頃、ある理科の先生が毎回の授業で口癖のように仰っていた言葉がありました。それは、「理科は『ドラえもん的発想』で考えなさい」というものでした。おそらく、「理科(科学)には、ドラえもんのひみつ道具のように斬新な発想が必要だ」ということなのだと思います。不思議なことに、10年経った今でもこの言葉が私の頭の片隅にずっと残っています。そして現在、学生サイエンスコミュニケーターの活動や自身の研究活動などを始め、この言葉の大切さを体感することが多くなりました。「どのようにして未知の現象を発見したのか?」、「自然現象の背後にある仕組みはどのようにして解明されたのか?」など、科学について考えると、そこには柔軟で斬新な発想が存在することに気づかされます。

そして、このような発想は科学的な知識や原理を活かした「モノづくり」の場面でも大切なものだと思っています。『宇宙兄弟』という漫画をご存知でしょうか。科学好き、宇宙好きにはたまらない一冊です。兄弟で宇宙飛行士になりたいという幼い頃の夢を諦めかけた30代のサラリーマンの兄が、仕事を辞めてもう一度夢を追いかけるお話です。

この主人公は無事に宇宙飛行士選抜試験を通過後、宇宙を目指して訓練を受けている中で月面探査用の新しい車を開発することになりました。彼は開発チームの中で斬新な設計アイデアを色々と出しますが、チームのメンバーからは笑い飛ばされてしまいます。そこで彼はメンバーに「新しいモノ作ろうって話なんだ。最初は何だって“仮説”だろ」と言いました。これは、作中に出てくる数々の名言の中で私の好きなものの一つです。新しいモノを生み出すときは初めから何でも「無理だ、できない」と思ったら、可能性を狭めてしまうことになります。思いついたアイデアを「どうすれば実現できるか」と計画を練った上で、「やってみる」と行動に移さなければ何も生まれません。このように、柔軟で斬新な発想を大切にして実現しようと試行錯誤することで、今まで様々なモノが生み出されてきたのだと思います。

科学の世界に触れることは、柔軟で斬新な発想と広い可能性を持つきっかけとなるのではないでしょうか。私は常に、科学の不思議を『ドラえもん的発想』で様々な視点から捉えようと心がけています。そして将来は、科学の仕組みを利用して何度も試行錯誤しながらモノづくりをすることに携わりたいと思っています。

皆さんも『ドラえもん的発想』という視点で科学の世界をちょっと覗いてみてください。科学の新たな魅力を発見できるかもしれません。