学生によるサイエンスコミュニケーション

深く考えるHSP

SMALL TALK about SCIENCE

皆さんはHSPという言葉を耳にしたことがありますか?

HSP(Highly sensitive person)は米国の心理学者であるエレイン・N・アーロン博士が提唱した心理学的概念です。アーロン博士の発表によれば、「DOES」と名付けた4つの特性をすべて満たすことがHSPの定義となっており、他人より敏感な神経システムを持ち、自分の周りの微妙なことにも気がつくことで、刺激の強い環境に置かれるとすぐ圧倒されてしまうという特性を持つ人を表しています。HSPは障害でも病気でもない一つの特性であり、4~ 5人に1人がHSP 気質の傾向であると考えられているようです。

「DOES」の具体例
1. Depth of processing
• 一を聞いて、十のことを想像し、考えられる
• 調べ物をはじめると深く掘り下げることができる

2. Overstimulation
• 人混みや大きな音が苦手
• 人の些細な言葉に傷つき、いつまでも忘れられない

3. Empathy and emotional responsiveness
• 人が怒られていると自分も怒られているように感じ、落ち込んだり、傷ついたりする
• ニュースや映画などに感情移入しすぎて、自分の事のように喜んだり悲しんだりする

4. Sensitivity to subtleties
• 冷蔵庫の機械音や時計の音など、些細な生活音が気になってしまう
• 肌着のタグなどチクチクする素材が我慢できないほど気になる

私自身、これまで周りの人からこのような言葉をかけられた経験があります。良い意味としては周りのことを見て行動できる「よく気がつく人」、悪い意味としては相手の言葉や周りの音を気にしすぎてすぐ疲れてしまう「気にしすぎる人」などです。私自身はそう思っていなくても、他人からみると「そこまで考えこまなくても」と思われてしまうことが過去にありました。そして、このようなズレに少し疑問を抱いていました。私のように人と話していて疲れてしまったり、音に辛くなったりするという悩みを周囲の人からあまり聞かない気がしたのです。そこでこのような悩みを持つ人は他にいるのだろうかと考え、調べていく過程でHSPという概念に辿り着きました。この概念を知った時、今まで感じていたズレが心にストンと落ちました。

私は電車の音や話し声などの音に非常に敏感なため、常にノイズキャンセリングイヤホンをして過ごしています。一方で、私は中学生の頃から楽器を始め仲間とともに楽器を演奏することを楽しんでいますし、音楽を聴くことを一つの趣味としています。音に敏感ではありますが、心が楽になる音であれば、共感性が高いため音楽をとても楽しむことが出来るのだと思います。このように、HSPは決して欠点ばかりではありません。

本執筆にあたり、私のような悩みを抱えている人やこのような性質を持つ人に自分だけが違うのだと思い込まないで欲しい、周りの人や環境に適度な距離と休憩を入れることで、疲れすぎない、無理しない日常を過ごして欲しいと伝えたいと思いました。また、より多くの人にHSPについて知って欲しいと考えました。ストレス社会と言われている現代社会において、誰もが心や体に影響を受けてしまうこともあると思います。HSPの特性を持っている人もそうでない人もストレスを受けやすい状況にある今だからこそ、様々な性格を持つ人がいることをお互いが認め合い謙虚な気持ちで思いやりをもって日常を過ごすことが出来る、より良い社会を築いていきたいと思います。この記事を読んで少しでもHSPについて興味を持っていただけたら幸いです。