若⼿研究者コラム

研究室での出会い

長島 駿

子供の頃、抱いていた研究者のイメージは一人で黙々と実験をしていて、人とコミュニケーションできなくても自分の世界にどっぷり入っている人であった。研究室に配属されて研究を始めるとそのイメージは大きく間違っていたことに気付かされた。研究をひとりですべて完遂できることは少なく、大きな研究成果を得るためには様々な協力者の力を借りる必要があり、コミュニケーションをとらなければならない。研究成果を発表する学会では数百人以上の前でプレゼンテーションする能力も求められる。研究室内でも学生や後輩の指導や連携、ラボメイトとスペースや器具を譲り合いながらトラブルを起こさずに研究生活を行う必要がある。つまり研究者には人間力も求められる。私の周りにはすぐに誰とでも仲良くなっているように見えるコミュ力の高い研究者が活躍している。多くの仕事と同様に研究者として活躍するには、研究の実力を伸ばすだけでなく、人間的な成長も必要になってきている。

研究室の責任者として研究室運営を中心に行うのがPrincipal Investigator(PI)であり、大学では教授がPIとなることが多い。PIはともに研究を進めていく上で協力者であり、上司であり、研究結果が正しいことを証明しなければならない関門でもある。PIとは研究について何度も議論することがあり、PIとの出会いは研究者人生に多大な影響を与える。私は幸運にもPIの当たりくじを引き続けていると個人的には思っている。研究には幸運が必要である。研究成果を得るには、幸運とそれを引いた時に遂行できる研究能力があるかが分かれ目だと、だから努力して実力をつけなければならないとのPIの言葉を今現在も意識して研究生活を送っている。私はイギリスのケンブリッジ大学でポスドクを経験しているが、その時のボスは年齢が私とほとんど変わらない若手PIで、私がラボで2人目のポスドクであったことから、とても熱心にディスカッションや研究指導をしてくれた。ある日、彼が素晴らしい研究成果を得る夢をみたから、すぐに実験してくれと言われたことがある。実験結果は夢でみた結果とは違っていたが、夢の中でも研究する人間が一流の研究者として成果を残すのかと感心したものだ。今後、東薬の研究室から夢の中でも研究するような素晴らしい研究者が育ち、一緒に研究できることを願っている。

細胞小器官のひとつであるミトコンドリアを
免疫染色法を用いて検出した蛍光顕微鏡の画像