若⼿研究者コラム

研究・学生・自分を育てること

茨木 ひさ子

「東京薬科大学」。大学受験の頃、東北の田舎出身の筆者にとっての本学のイメージは「私立薬学部で日本一の歴史と学生・卒業生数」「研究活動が盛ん」「高層ビル群に囲まれたキャンパス」というものでした。薬学部受験で初めて本学を訪れた筆者は、「あまりにも自然豊かなキャンパス」に大変驚いたことが昨日のことのように思い起こされます。それから12年経った今、自然いっぱいののびのびとした恵まれた環境で研究生活が送れることが如何に幸せかを実感している毎日です。

薬学部では、4年時の研究室配属後、CBT・OSCE対策や実務実習等のため、卒論研究時間が非常に限られています。その中でも、昼夜問わず実験に没頭し膨大な実験量をこなす学生さんのやる気に感心することもあれば、逆に目標が見つからずに苦心する学生さんの指導に悩むこともありました。実験が楽しい! 研究を続けたい! と言ってくれたり、良い結果が出たときには一緒に喜び同じ時間を共有できることは代えがたい幸せで、教員である筆者の方が学生さんから学ぶことの方が多いかもしれません。

また、研究のタネや仕事のきっかけはどこにでも転がっていると感じています。しかし、それを掴み実践することがどれだけ大変か。そのためには努力を怠らないこと、何でもとりあえず挑戦してみること、ちょっと視点を変えてみることを心掛けて、しっかり根を張り太い幹を作るように自分を育てていけるように努めています。

筆者は今、次世代の医薬品として注目を集める核酸医薬のドラッグデリバリーシステム(DDS)について研究しています。皮膚やがんなどの送達困難な組織を標的として、様々な投与経路による核酸医薬の組織内浸透性に優れる脂質ナノ粒子の特性探索を行い、核酸内封脂質ナノ粒子を新たに設計することで、組織内浸透性向上と難治性皮膚疾患やがん治療効果を実証してきました。この研究成果が認められ、学会の発表賞を3件受賞し、10報以上の原著論文を学術誌へ掲載できました。患者さんと医療へ貢献できるDDSの実用化を目指す日々ですが、受賞や助成金の獲得,論文掲載は間違いなくモチベーションアップに繋がっています。研究者としても大学教員としてもまだまだ若輩者ですが、患者さんに本当に必要とされるDDS研究が実現できるよう、これから益々精進して参りたいです。