局所最適化
ボールをでこぼこのある地面に置くとへこんだ所に止まる。一方、大きなくぼみにでこぼこのある場合は少し複雑である。全体としてみれば、大きなくぼみの底の方が低いのだが、部分的にへこんだところがあるとボールは部分的にへこんだ所で止まる。局所的に安定な場所に止まることを局所最適化と言う。
局所最適化と大局
地面の起伏ではなく、何かの事柄を最適化しようとする場合にも似たことが起きる。例えば日本の戦国時代、国の中での勢力争いがおきると、異なった勢力間で争って、強い勢力が国を支配することになる。しかし、国の中で勝者となった勢力が、戦国時代の国同士を考えた場合に勝者になれるとは限らない。局所的には最適でも、大局で最適とは限らないからである。
その理由の一つとして、勝者を決めるルールが局所と大局で異なるということがある。例えば、国内での争いではその地域の住人や豪族との良好な関係が重要なのに対して、国同士では国の経済政策や外交政策、軍事政策が重要だったりする。すると、国内での争いの巧者が国同士の争いでは必ずしも巧者ではなくなる。
様々なレベルでの局所と大局
つまり、小さい集団(グループ)間での競争ルールが、より大きな集団間でのルールと同じであれば、小さい集団での競争が大局的な競争にも有効に働く。しかし、ルールが異なると、小さい集団での競争は、大局的に適した集団を選ぶことにならなくなる。
この現象は、個人と小グループ、小グループとそれを包含する大グループ、生物種と自然界のように全ての段階で現れるはずである。
集団間で「競争」をするのであれば、様々なレベルで、より大きな集団と同じルールを採用することが有効そうである。もっとも、より大きな集団でのルールが分からない場合も多いので、ルールを一致させることはそう簡単ではない。しかし、より大きなグループのルールはそのルールを知っているかどうかに係わらず、結果としてその構成員に適用されてしまう。
雌雄選択
ダーウィン進化における自然選択の一つに雌雄選択というのがある。雌雄選択というのは、オスがメスを選ぶこと、メスがオスを選ぶことを指している。雌雄選択が種の進化を引き起こすことがある。その場合、雌雄選択の基準でメスやオスが選ばれるので、選ばれる特徴が増強されるという現象が起きる。
例えばオオツノシカのメスが角の大きいオスを選ぶことによって、オオツノシカのオスの角が身体に比べて非常に大きくなってしまったと考えられている。最初は身体の丈夫なオスを選択するという合理的な理由があったが、雌雄選択が一人歩きしたと思われる。大きすぎる角は、カルシウムやリンを必要以上に必要として自然界での生存にとっては必ずしも適切ではなく、オオツノシカは絶滅したという説もある(『わけあって絶滅しました』 丸山貴史著 ダイヤモンド社 2018)。つまり、オスとメスのペアという最小集団のルールが、自然界のルールに合っていなかったということになる。そして自然界のルールに合わないルールをもつグループ(種)は絶滅した。
局所的な勝者は大局で選択されるか?
局所的なルールで選択されても、大局で選択されるとは限らないではないか。その通り。局所的なルールで選択されても、大局で選択されるとは限らない。しかし局所的なルールが大局と同じ場合には、局所的に選ばれた候補は大局でも有利な候補を選んでいることになる。局所のルールを大局と一致させることが、グループの生存の為には有効そうである。