東薬植物記

ミントの香りと冷たさ

三宅 克典

北海道の北見ではかつて大規模なハッカ栽培がおこなわれていました。日本在来のミントであるハッカはメントールの含量が高いため、蒸留して得た精油から結晶化したメントールを回収するのに好都合でした。戦前には世界の半分以上の薄荷脳を生産していた時期もありましたが、ハッカなどのミント栽培は人手がかかるため海外で行われるようになり、現在ではインドやブラジルが主産地になっています。

ところでハッカ油やメントールが入ったものを皮膚に塗るとすーっとしませんか? また、ミントのガムを食べると口内がすっきりしますね。これは、熱が奪われて冷たくなっているわけではなく、メントールによりTRPM8という受容体を通じて冷たさを感じた時と同じ刺激が脳に伝えられるからです。類似する受容体にTRPV1があり、こちらはトウガラシに含まれるカプサイシンによってもたらされる熱感やヒリヒリ感に関与しています。

ミントの仲間であるシソ科ハッカ属には世界中におおよそ24種と15の雑種が存在するとされていますが、古くから人為的な交雑が繰り返されていることもあり、この数には議論の余地があります。ハッカをはじめとして、身近なところでは、スペアミント、ペパーミント、アップルミントなどを目にしたことがあるかもしれません。

シソ科には、ミントやシソのほかローズマリー、タイム、バジルなど香りが強い植物が多く含まれます。これらの植物の表面には精油成分を蓄積している腺毛があり、触れたり調理で溶出させたりすることで香りを感じることができます。東京薬科大学薬用植物園では、香りが特徴的な植物の一部については「触れてもよい」という表示をしています。ご来園の際には是非とも触れて香りを楽しんでください。

投稿日:2024年09月25日