学生によるサイエンスコミュニケーション

小学生の頃の私の夢はデザイナーでした。

SMALL TALK about SCIENCE

「『美術と科学』はかけ離れた分野ではないか」と疑問を持つかもしれません。しかし、美術と科学には似ている部分があり、深く関わり合っているということを少しでもこの記事から感じてもらえると嬉しいです。

私は、昔から動物や植物の絵を描いたり、粘土などで工作したりするのが好きだったことから、漠然と美術の道に進もうと考えていました。しかし、高校1年生の文理選択を考える時期となり、「周りには、絵が上手で自分には思いつかないアイディアをたくさん持っている人がいるし、私はデッサン苦手だし、将来安定した職につけるのか」などと不安になり、「本当にこのまま美術の道に進んでもいいのか」と悩んでいました。当時通っていた美術予備校の先生に相談したところ、紹介されたのが、中谷宇吉郎でした。中谷宇吉郎は、雪の結晶の研究をして、世界初人工雪結晶を作製した人物で、「雪は天から送られた手紙である。」という言葉を残した物理学者ですが、一方では随筆や絵画、科学映画などの作品を残したアーティストでもあったのです。

中谷宇吉郎の人生から学んだことは、「やりたいこと好きなことは続けるべきだ」ということだけで、正直高校生の頃の私には刺さりませんでしたが、それを機にもう一度進路を考え直した結果、「理科などの専門的な分野は個人や趣味では続けられない」と思い、理系大学に進路を変更しました。

生命科学には、生物・化学・医学など多岐にわたる分野があり、互いに補い合うことで病気の治療法や、薬や食品が作られていることがわかり、興味深いです。現在は、特に創薬や遺伝子工学に興味があります。創薬は、ある化合物の薬理活性を上げたり、毒性をなくすために形を変えたり、化学合成するところ、また遺伝子工学は、目的の働きを持たせるためにゲノム編集するところが、デザインと通じる部分があるのではないかと思います。

デザインは、辞書的には「建築・工業製品・服飾・商業美術などの分野で実用面などを考慮して造形作品を意匠すること。図案や模様を考案すること。目的をもって具体的に立案・設計すること。」という意味なのですが、人の興味を惹きつけるための広告デザインや、生活用品や車などの見た目や使い勝手を設計するプロダクトデザイン、快適に過ごすためのスペースデザインなどを見ると、既存のものを改良する点や、今までになかったものを新しく作り出す面では、創薬や遺伝子工学も、デザインに似ていると感じます。

現在は、興味が詰まった創薬の分野で薬をデザインする人になることが目標です。一方で、美術館巡りやアクセサリー作りなどの趣味や、SC活動でのポスター作りなどを通じて、美術も続けています。

投稿日:2025年03月25日