学生によるサイエンスコミュニケーション

科学を 「知る」 こと 「理解する」 こと

SMALL TALK about SCIENCE

このふたつの単語は、ある物事を「認識している」という点で同じ意味の単語です。しかし、「知る」よりも「理解する」の方がより詳しく、深く把握しているように感じられます。では、 科学においてこの違いはどこに現れるのでしょうか。私はその差は、実感を持って認識できるかという点と、使いこなす(説明する)ことができるかという点に現れるのではないかと考えます。例えとして、クロマトグラフィーという実験手法にまつわるエピソードを紹介したいと思います。

クロマトグラフィーとは、物質を分離するための方法の一つで、私はこれを高校化学で初めて知りました。しかし習った当初は、どうして物質を分離できるのか、どのように行うのかなどをよく理解していませんでした。その後、大学に入り、有機化学実習などさまざまな実習でTLC(薄層クロマトグラフィー)を用いるようになります。TLC を行うと、溶液中に複数あった物質は、それぞれ異なるスポットとして現れます。この時初めて、物質が本当に分離したことを目で見て確かめることができました。

また3 年生に上がると、所属している有機合成化学研究部で、新入部員に向けてTLCの仕組みについて説明する機会がありました。その資料を作る過程で、自分の言葉でTLCを説明し直してみると、言葉に詰まってしまい、わかっているつもりで実は理解できていない部分があることを自覚しました。その部分を改めて学び直すことで、以前より理解が深まったような気がしています。こうして振り返ると、高校生の頃の「知っている」状態から、現在の私は、完全ではなくても「理解している」状態に近づいているといえるのではないでしょうか。

「知る」ことと「理解する」ことの間には、その認識の深度に大きな違いがあります。そしてこの差は、記憶の定着や、知識を活用する力に影響すると思います。高校生以上で学ぶ科学は、身近な物事から少し距離があったり、よりミクロだったりして、「理解する」ことは難しいです。しかし、実験や自分で説明する経験などを通じて、少しずつ「知る」から「理解する」へ変えることができるはずです。

大学で学ぶ内容は難しく、量も多いので、テストを考えると、「とりあえずの暗記」に終始してしまうこともあります。しかしそのような中でも、できるだけ「理解する」学びを意識していきたいと、私は思うのです。

(2025FALL CERT12より)

投稿日:2026年02月05日