学生によるサイエンスコミュニケーション

地球温暖化解決のカギに! 〜光合成微生物の未来への期待〜

環境応用植物学研究室(応用生命科学科)
写真:藤原祥子教授

美しい光合成微生物が地球温暖化の原因物質の1つであるCO2の削減に役立つ可能性がある。光合成微生物の力を借りて環境をきれいにする研究をしている藤原祥子教授。この微生物の魅力と環境問題の解決に向けた応用について聞きました。

SDGsに環境問題に関する目標があるように、最近は環境問題に対して世間の関心が高まっています。この問題を解決するために、現在、光合成微生物が注目されています。光合成微生物とは、光エネルギーを利用して生育している微生物で、種類によって色や形がさまざまです。特に、光が当たると光合成微生物の緑色がより輝いて見え、とても美しいです。この微生物を利用してどのような研究が取り組まれているのか知りたいと思い、藤原教授に、光合成微生物の魅力やその可能性について、取材を通して迫りました。

培養している光合成微生物

研究課題は「光合成微生物パワーの活用で、食品・環境・エネルギーに応用可能な夢ある研究を目指す」とのこと。このような目標で研究しようと考えたきっかけは何ですか。

大学4年生の時に出会った光合成微生物シアノバクテリアが、光エネルギーだけを使って生育することができ、さらには、CO2固定(生物が体内に取り込んだCO2から有機物を合成すること)、窒素固定、水素発生ができることに惹かれたからです。現在では、光合成微生物のCO2固定を利用して大気中のCO2削減ができる可能性があることから、光合成微生物が注目されています。

小さな光合成微生物でCO2を減らすのは本当に可能なのでしょうか。

太古の地球では小さな光合成微生物が登場してからCO2の濃度が減少しているので、十分に可能性はあると思います。しかし、光合成微生物が大量に必要なので、大量培養法の確立など多くの課題があります。

最近は、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)という言葉をよく聞きます。藤原教授の研究室で行っている研究はSDGsの17の目標の中で、どこに含まれていますか。また、その目標の達成のために、どのようなことに取り組まれていますか。

目標13「気候変動に具体的な対策を」の部分に該当すると思います。研究室では、地球温暖化の原因であるCO2の削減を目標に、光合成微生物を用いて基礎研究を行っています。今後は、基礎研究を継続すると共に、研究を応用するための課題である、光合成微生物を大量に確保するための方法についても考えていきたいです。

最後に、藤原教授が研究者として最も大事にしていることを教えてください。

研究を楽しむことです。純粋に研究を面白いと感じることは、研究を進める時の更なる原動力になります。将来研究者を目指している人は、楽しんで研究に取り組み、自分の持っている夢を大切にして、「やりたい」と感じたら積極的にどんなことにも挑戦してほしい、と思います。

光合成微生物が将来の地球環境の保全に役立つ可能性があることが取材で分かりました。近い将来、光合成微生物が私たちの生活を「持続可能」なものに変える新たな技術が生まれるかもしれません。今後もどのような研究成果が発表されるのか楽しみです。

※本記事は授業「生命科学ゼミナールⅡ(サイエンスコミュニケーション入門)」の一環として、学生が取材、執筆を行いました。