学生によるサイエンスコミュニケーション

センス・オブ・ワンダー

SMALL TALK about SCIENCE

皆さんの「好きなこと」は「得意なこと」でしょうか?興味のある分野や好きなことは必ずしも得意なこととは限りません。私が学生サイエンスコミュニケーター活動を始めた理由は、理系科目が苦手な人にも科学の面白さを伝えたいと思ったからです。私は小学生の時から算数が得意ではなく、中学生になる頃には理系科目全体に苦手意識がありました。ところが、あるとき山で空いっぱいの星を見たことをきっかけに、天体や宇宙について興味を持つようになりました。星にはどんな種類があるのか、宇宙はどうやってできたのか、次々と疑問が湧いてきたので、さっそく色々な本を読んで調べてみました。しかし、今まで物語やエッセイばかり読んできた当時の私にとって、Blue Backsなどの新書は難しく感じられました。そうしてわからない単語や慣れない表現に苦戦しているうちに、科学雑誌「Newton」に出会いました。Newtonは、載っている写真や文字が大きく、ページ数は少なく、色使いのカラフルな雑誌でした。もともとは天体や宇宙に興味が湧いて読み始めたNewtonでしたが、工学、数学、人体、元素などどんな内容も必ず惹かれる見出しがついており、どれもわかりやすくまとめられていました。そして気づいた頃には科学全体に面白さを感じるようになっていました。また、雑誌の初めの部分には、最新の科学ニュースやトピックスが載っていて、科学がさまざまな角度から研究され、社会へ応用されていることを知りました。私の中で物理、化学、生物、地学の4つでしか別れていなかった科学は、想像以上にたくさんの分野があり、一つ一つをたどると分野同士が繋がって際限なく広がる宇宙のようだと感じました。私が科学に興味を持ったきっかけは遠く離れた星や宇宙でしたが、今は一番身近に存在している体の中の生命のしくみについて、もっと知りたいと考えています。なんだか宇宙と体の中は似ている気がするのです。

このような経験から科学の面白さを伝えたいと意気込んで始めた学生サイエンスコミュニケーション活動でしたが、実際は自分がわかった気になっていたことや見過ごしていた疑問に気付かされるばかりの日々でした。科学の面白さを伝えるという目標は一見立派に見えますが、一方で漠然としていて、その効果も見えづらいものです。体験実習やイベントを通じて、一方的に伝えようとするだけではコミュニケーションは成立せず、押し付けるだけになってしまうことを学びました。試行錯誤を繰り返す中で、科学の面白さを伝えるというよりも、感想や考えを伝え合うこと、疑問について一緒に考えることが今の私にできるサイエンスコミュニケーションだと気がつきました。

私が科学に興味を持ったきっかけが「理系科目が得意だったから」ではなかったように、

理系科目が苦手でも、理系分野を専門にしていなくても、科学を面白いと思うきっかけを作ることができたらいいなと思っています。

最後にタイトルの「センス・オブ・ワンダー」とは”不思議さに目を見張る感性”という意味です。これからもたくさんのことを学び、不思議に感じたことやわくわくしたことに対してまっすぐ向き合い続けたいです。

投稿日:2025年03月14日